思い出



 子供のころ近所の女の子の家に変な手紙が入れられた。その子は学校に相談して先生がその話をみんなにした。話の最後に「こんなことは遠い家の奴はわざわざしないだろうけどな」 この一言のおかげで家の近かった僕が犯人のように思われた。

 僕は犯人を知っていた。そいつらは僕の友達で(それほど仲良くない)、家に突然きてペンと紙を貸してくれといってきた。その紙にからかった言葉を書いて女の子の家のポストに入れたのだ。

 直接言われたわけではなかった。でも僕が犯人だと思われていたことは判った。誰かが「あいつがさぁ......」と言い始めて声が聞こえなくなった。

 僕は何も言えず、ただじっとしているのが精一杯だった。



 子供のころのあるお正月。親戚が集まる中に羽振りのいい叔父さんがいた。彼は子供たちにお年玉をあげていたが、僕がもらうとすぐに取り上げて、「おまえはもらってもちっとも嬉しそうな顔をしない。まったくかわいくない。おまえにはやらん」

 それを見ていた祖母が間に入って僕はもう一度お年玉をもらいなおした。嬉しそうな顔をしなけばと思い、精一杯の作り笑顔を浮かべて。

 おじさんは冷たい、見下したような顔でぼくを見ていた。



 小学校の入学式の時、ひとりひとりの子供の胸に、名前の書かれたワッペンを先生につけてもらえる風習があった。

 でも、手違いで僕の分だけ用意されていなかった。

 なぜか、「やっぱりな...」と思った。



 高校を途中で止めていく人がいた。僕はなんと声をかけていいかわからず、つい彼をじっと見つめて固まってしまった。

 彼は「そんな目で見んじゃねーよ」と言って行ってしまった。
 そしてそのことをうじうじと気にしながらも、何にもできない自分。



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